前回の続きの小説、中編です。
登場キャラ
↓昨日残した締め鯖さん作
●香包(シャンパオ)
↓鉈っちさん
●フロレスティーナ・カマンベール
↓自作キャラ
●コラシッド・舞夜
↓來さん作
●ウーヴァ・ロホ(赤井 美酒)
【前回のあらすじ】
不良に絡まれたカマンベール。
そこへ啖呵を切って現れたコラシッド。
だが、彼は喧嘩には強くないようで威勢とは裏腹にやられてしまう…。
カマンベールは彼を助けるために偶然出くわせた香包に助けを求めるのだった…。
カマンベール・香包
「はぁッ…はぁッ…」
二人は肩で息をしながら目的地まで急いで向かっていた。
そして緊迫した空気のまま現場へと辿り着く。
そこには…
壁を背にして地面へへたり込んだ彼の姿が目に入り込んで来た。
カマンベール
「しっかりして!!
今、助けを呼んできたの!」
香包
「ダイジョブ?
貴方、酷い怪我だヨ」
コラシッド
「はぁッ…。 なんとかね…」
不良
「ちっ、面倒なのが来やがった」
香包
「これ以上、この人を痛めつけると言うなら、ワタシにも考えがあるヨ」
不良
「なんだてめぇ、俺とヤルッてのか?
いいぜ?おらッ!!」
挑発と共にいきなり香包に殴りかかった、だが――。
香包
「見切ったヨ」
上体を逸らし、瞬時に拳を回避してみせた。
そして、その手首を掴み、身体に負荷を欠けないよう相手を背負い、
そのまま地面に叩きつけると、うつ伏せの状態から組み敷く形をとり、相手の身動きを封じて見せた。
その動きはあまりにも速すぎて視界に捉えるのは不可能だった。
香包
「…まだ、抵抗する…?」
先ほどとは打って変わったかのように、
彼の纏(まと)う雰囲気が一変していた。
薄く開かれた瞳も大きく見開かれており、まるで別人のよう。
念には念をと言うように、掴んでいた両手首を強く捻って見せる。
みしみしと関節が唸りを上げる。
もう少し力を加えると、彼の両手首は折れてしまうだろう。
そんな際どい力で抑えつけられていた。
不良
「いってえぇえ! や、止めろ!!
頼む! 頼むから止めてくれ!
も、もううそいつらには手を出さねえ!
だから、お願いだ!」
香包
「……わかったならいい。
ほら、さっさと逃げた方がいいヨ」
そう言い放って拘束していた両手首を解放した。
不良
「クソッ!なめやがって!
ただじゃおかねえからな!覚えてやがれ!」
お決まりの台詞を吐き捨てると、
不良はばつ悪そうにその場から退散した。
カマンベール
「ごめんなさい、助けに来るのが遅くなってしまって…。
大丈夫、…ではなさそうね。
酷い怪我、すぐに手当てしないと!」
彼は左目の上にピアスを二つ並んでつけていてる。
ちょうどその辺りから大量の血液が流れ出していた。
おそらく不良との揉み合いの中、出来た傷だろう。
番(つがい)のように並んでいたピアスは殴られた衝撃により破損したのか、
皮膚に食い込み、額の骨組みが一部陥没してしまっていた…。
見ているこちらが苦しくなるほどの、生々しい状態だ。
そして地面には、彼のものか、小さな血だまりが出来ており、
彼がいつも付けている十字架のネックレスのチャームだけが悲しく浸り落ちていたのだった。
おそらくこれも揉み合いの中、引き千切られてしまったのだろう。
ベタなシチュエーションなら、この祈りの十字架は、彼を勇気づける役割を果たしてくれていたに違いない……。
だが、現実はそう甘くはない。
奇跡なんて起きないのだ。
だからこその奇跡でもある。
血に染まる十字架を彼はそっと拾い上げる。
そして、自身の胸元まで近づけさせると、ギュッと握り締めた。
まるで、失った光を取り戻すように、ギュッと、ギュッと、強く胸に当て握りしめる。
コラシッド
「………」
彼は握り締めた十字架を見つめ続けている。
青い瞳には仄暗い影が落とされ、何を映し出しているのかわからなかった。
彼は今、何を想い、何を願ってるのか。
そしてその瞳に、何が映し出されていると言うのか…。
ただ、一つ言えるのは、この十字架は彼に取ってのかけがえのない大切な物。
そうでなければ、焦がれるほど見つめてはいないだろうから…。
何かを察したのか、香包は声をかけた。
香包
「おーい!ワタシの姿、見えてる? おーい!」
十字架を握りしめたまま動かない彼の前で手を振ってみせる。
コラシッド
「………」
やはり、反応がない。
一応意識はあるようだが…。
カマンベール
「ねえ、貴方!?」
今度は彼女が声を掛けてみる。
すると…。
コラシッド
「……ッ!?
え、あ…ごめん。
ちょっと…ぼーっとしちゃってた。」
そこでようやく彼は気づき、顔を上げる。
カマンベール
「貴方、本当に大丈夫!?
わたくし達のこと、認識できるかしら?
こんな酷い有り様だもの、
意識が朦朧(もうろう)としててもおかしくないわ!
わたくしのせいね…ごめんなさい…。
貴方をこんな目にあわせたのは…わたくしよ!
ごめんなさい…わたくしが貴方を……ッ
ごめん…なさい…!
何も…できなくて…
本当に、ごめんなさいッ…!」
何度も何度も謝罪をする彼女。
瞳からは尽きない涙が溢れ出てくる…。
自分を助けてくれた人が目の前で傷ついている。
そのことに対し彼女は酷く許せなかった。
自分の行いのせいで他人が傷つくことを…。
何も出来なかった自分を…。
これは、自責の涙。
だからこそ、彼女は何度も同じ言葉を繰り返す。
今の自分にはそうすることしか残されていなかったからだ。
彼女を助けたせいで自分はこんなにもボロボロ。
それにも関わらず、痛みなんて気にしない、と言うように、目の前で泣いている彼女を優しく励ました。
コラシッド
「…そんな顔しないで?
こんな状態で何言っても説得力に欠けるけど……
君のせいじゃ…ないだろ。
俺が勝手にやった事だ…。
あのまま俺を見捨てて逃げる事だって…可能…だったはずだ。
だけど君は…こうやって…ッ
…戻って…来てくれた…じゃないか…はぁッ。
助けに来てくれた…じゃないか…。
こうやって、俺のために……泣いてくれて…いる…じゃないか。
だから、そんなに、自分を…責め…ない…で…」
そう言葉を残した後、彼は地面へ倒れ込んでしまった。
・・・・・・。
・・・・。
・・・。
一方、その頃…。
???
「うふふ。どうして逃げるのです?
あなたにやましい事がなければ、
逃げる必要もないはずですよ」
不良
「しつけぇぞ!
何なんだよ、お前!」
あまりにもしつこかったためか、
仕方なく足を止め、追いかけてくる女の方を振り返った。
ウーヴァ(美酒)
「あぁ、すみません。
まだ、名を名乗っておりませんでした。
私はウーヴァ・ロホでございます」
不良
「でぇ、そのウーヴァ・ロホさんがなんのごようですかねぇ?」
ウーヴァ(美酒)
「そうですね、
口で説明するよりもこちらをご覧いただいた方が早いかも知れません」
そう言って、ウーヴァはスマホを取り出し、ある動画を再生させ彼に見せる。
そこには、路地裏で三人の男女が揉め合う姿が捉えられていた。
動画の男1
「君は早く行って!」
動画の女
「でも、貴方がッ!」
動画の男2
「何をゴチャゴチャ揉めてやがる!!
シカトこいてじゃねぇぞ!」
やがて動画に映っていた片方の男が、
もう片方の男に詰め寄り、そして…。
動画の女
「キャァッ!!」
動画の女性が悲鳴を上げる。
どうやら先ほどの男がもう片方の男に暴行を働いたようだ。
動画の男1
「ぐは…がは…うっ…」
殴られた衝撃により、彼は苦しそうに唸りを上げる。
動画の男1
「俺のことは、いいから、早く…君は逃げて…早くッ!!」
動画の女
「わ、わかったわ。
すぐに誰かお呼びするわね」
そして、そこで動画の再生は終わる。
不良
「そっ、それはっ!?
てめぇ、いつの間にっ!」
ウーヴァ(美酒)
「私と取り引きをしましょう」
不良
「はぁ…?
そんなもん俺が乗ると思ってんのか!」
ウーヴァ(美酒)
「いいんですか、そんなこと言って、
これが見えますでしょうか」
そう言うと、相手に見えるようスマホを取り出し構えると、ある動画投稿サイトを開いてみせ――。
ウーヴァ(美酒)
「ここにこの動画を投稿してもいいんですよ?」
と宣言して、スマホを見せつけながら“アップロード”と書かれたボタンに指を添えた。
画面に触れるか、触れないかのギリギリの際どい手前で指は静止している。
不良
「や、や、やめっやめろッ!!
バ、バカな真似はよせ!!」
ウーヴァ(美酒)
「この動画をネットに公開されたら
あなたの人生は露と消える…。
取引、応じてくれますよね?」
不良
「クソッ…なんだって俺がこんな目に合わなきゃなんねえんだよ。
さっきのヤツといい、お前といい。
で、その取り引きってのなんだ!」
悪態を吐(つ)きつつも彼女の話に耳を傾けた。
ウーヴァ(美酒)
「簡単な事です。
あなたの身体に流れる血。
そう、私の喉を潤すあなた血を、
私に、くださいッ…!」
――――――――――
中編はこれで終わりです。
【次回予告、
そして最終回(かもしれません)】
コラシッドの元へ急いで向かう二人。
そこで香包と不良は対峙するが、不良は撤退を余儀無くされる。
傷ついたコラシッドの姿を見たカマンベールは自責にかられる。
そんな彼女を彼は優しく励ますが、突然倒れてしまうのだった…。
果たして彼は…!? まだ食べれないのか肉まん!!
ウーヴァ(美酒)
「あの方は死んでしまわれたのでしょうか…
お悔やみ申し上げます」
コラシッド
「ツッコミを入れたいところだけど、
ネタバレになっちゃうから止めておこうか」
カマンベール
「貴方がここにいる時点で
答えを言ってしまってるも同然よ。」
香包
「これはちょっとした布石だヨ」
次回登場予定キャラ
(異なる場合があります)
↓昨日残した締め鯖さん作
マッカラン・w・ラリック
黒 とうふ
もうしばらくお付き合いください(>_<)
To be continued. …。