拝啓
お昼になると外には春らしい陽気が降り注ぎ、一足先に春のおたよりが届いたような気分です。
しかしこの頃は夜空も曇り続きで、綺麗な星も見れなくなってしまいました。
あなた様が今、空を見上げたとしたら、如何なる眺望でしょうか。
本題へ入る前に、もういちどお詫びをいたします。
お返事が遅れてしまって、本当に申し訳ございません。
学業もいよいよ佳境に入り、より一層学びを深めんとするにつれて時間も無くなってゆき…
いや、思い返せばお返事をしたためる時間はたくさんあったのです。
私が怠けていただけのことで、弁解のしようもありません。
このままごちゃごちゃと言葉を並べても、
あなた様をお待たせしてしまった時間が戻るわけでもありませんし、
見苦しいだけだと思われますので、本題へ参ります。
まずはお名前の件ですが、「天瀬」はいかがでしょうか。
アマセと読みます。ここから先は少しだけ理由をご説明しますが、
上手く表すことが出来ていないと思うので、読み飛ばしていただいても構いません。
あなた様がお名前の件を私に委ねてくださった時、
真っ先にあなた様と私が共有出来る具体的なものはなんだろうと考え、
すぐに考えついたのが天気、空でした。
空の情景を今までのお手紙で共有出来たことは、私にとって、本当に喜ばしい事でした。
(なんだかありきたりで申し訳ないような気もいたしますが、私が変に独創性を出したとしても、へんてこな結果になるのが目に見えております。)
そんなこんなではじめに「天」という言葉を当てはめました。
そして、あなた様から“クラシック”というお言葉を頂いた時、
「西洋音楽史」の影響もあってか、川という文字とその風景が浮かび、
次に、クラシックという言葉の意味から厳かな雰囲気、悠々たる自然が想像され、
瞬く間に瑞々しい緑に囲まれた川上の光景が脳裏を駆け巡りました。
その光景から、「瀬」という字を選ばせていただきました。
理由は以上になりますが、もしこの名前がお気に召さない場合は、遠慮無く仰ってください。
たとえネットの中だけだとしても、お名前はお名前で、大切なことですから。
あなた様のお気に召さない場合は、
もう一度イメージを練り直すことも厭わない所存です。
あなた様が良しと言ってくだされば、次から天瀬様と呼ばせていただきたく存じます。
それから松尾芭蕉に関するお話ですが、とても面白く、感心しながら拝読しました。
私は文学について深く研究をしたことはほとんどありませんが、
大変わかりやすく、「なるほど!」と唸ってしまう文章でした。
私の場合は文学の部分を音楽に置き換えてみると、さらに楽しめました。
音楽に限らず、なんらかの芸術ならば例外なく置き換えることが出来そうです。
文を読み、人となりを考察してみて、
その人のどんな部分がこの芸術を生み出したのだろうと推察することは、
想像するだけでも愉快です。
それと、私の語彙を褒めてくださって、更には嬉しいお言葉、本当に有難うございます。
本当にとてもとても嬉しくて、恥ずかしげもなく何回も文を読み返してしまいました。
しかし私の語彙や文学に対する知識、姿勢に不足があるのは確たる事実です。
あなた様の文章を拝読しておりますと、言葉に対する意欲が湧いてきます。
(あなた様の文章を私の拙い語彙で称えては、
却って失礼にあたると思いますのでこれくらいでご勘弁を。)
四苦八苦しながらも精進を重ねたいと思いますので、
これからも暖かい目でご覧になってくだされば幸いです。
赴くままに筆を走らせていたらかなりの長文になってしまいました。
もっと簡潔に事を伝えられないものかと我ながら思ってしまいますが、
お伝えしたいことは全て書けた気がします。それでも、やはり次からは
もっと簡明なお手紙が書けるように気をつけたいと思います。
さて、お昼は暖かいと書きましたが、
朝夜は芯まで冷えるような寒さが依然としておりますので、
寒暖差などで体調を崩されませぬようご自愛ください。
あなた様も、ご無理はなさらないでくださいね。
春はもうすぐにやってくると思います。
敬具