悪役かな??悪役にしたい!!
サディとマシューを嵌めた彼のお話。
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彼らに初めてあったのは、ギルドの食堂だった。
憎たらしい。
魔族は他族を馬鹿にして貶して、散々な目に遭わして最後は希望さえも奪っていくのだ。
昔からの物語……どれもが魔族は悪だった。
正義は、魔族以外の者なのだ。
それなのに………それなのにどうして……??
「あぁ、いい考えがある始末してしまおう……」
ギルドに入ってすぐにとある噂が皆の話題になり、僕もその噂を聞いて驚いたのを覚えている。
「このギルドに魔族が入ってきたみたいだ」
たくさんの人が騒ぎながら食事を楽しむ中で目の前の仲間が言ったのだ。全く、飯が不味くなる。
けれど仲間はそんな俺の気持ちなど知らずに噂話をあたかも自分の目で見たかのように話し始めたのだ。一人は、吸血鬼で名はサディル…もう一人は悪魔で名はマシューというらしい。二人はギルド試験を難なくこなしたのだと……。当たり前だろう。魔族は少数の族だが、魔力だけは他族よりは多くもっているので僕達が受けている試験だけでは簡単にこなしてしまう。そんなに危ないほどの力をもっている奴らなのに目の前の彼は感動したやらすごいやら言っている。全く、理解ができない。
思えば、あれはただ彼らが眩しくて羨んでいたのかもしれない。
あれから会うたびに愛想だけは良くして、なるべく彼らの信頼されるような仲間になろうとしたんだ。どれだけ時間がかかるだろう?何て考えたが、彼らは馬鹿みたいに優しかったようだ。すぐに仲間と言えるぐらいに仲が良くなった。なぜ、仲が良くなったかって?そりゃ、信頼するような仲間から裏切られたらとてつもない気持ちを味合わせることができると思ったのだ。
そんなある日の事だ。
今日は、一人でクエストをしにとある森に来ていた。その森には、昔から悪魔がすんでいるとか噂のある森でいつもどこか暗く不気味だった。けれど、今日はとある薬草を取りに来ていた。悪魔と戦うなんて一人でなんてできやしない。相手は化け物だ。叶うわけはないのだ。ある程度薬草を採れば、帰ろうと道を歩き始めた矢先。
「なんだぁ?美味しそうな匂いだと思ったら甘い匂いがする妖精じゃねぇか……あはは、お前俺ら魔族が苦手なのかぁ??」
突然だった。いつのまに近くにいたのだろう?彼は木の枝にもたれ掛かりながらもこちらを見てニヤリと面白そうに笑っていた。悪魔にすれば、新しい玩具を見つけたぐらいなのだろう。けれどこちらは、たまったもんじゃない。驚きと恐怖で何も声にすることができない。そんな僕を見て益々口許を三日月のように歪めながらも悪魔は言った。
「ぎゃははは!俺がお前を悪魔の倒し方を教えてやるよ………なぁ、いいだろぉ?」
それは、半分脅しで取引だった。断るなんてできない。蛇に睨まれた蛙のように一触即発のような状況に冷たい汗が頬を伝い落ちていく。こんなの………こんなの答えは決まってるじゃないか。どう考えても自分が不利な状況に乾いた笑いを溢しながらも頷いては言った。
「あぁ、教えてほしい……」
それから僕は、光を浴びて生きることを諦めた。
「なぁ、最近お前おかしくないか?」
「なにが??」
「いや、サディやマシューと絡んでるお前おかしいよ。なんか、媚びるように一緒にいてるだろ?」
「別に………そんなことないけど………」
ふと、とあるクエストの帰りの時に幼馴染みはポツリと何気なく呟いた。その言葉は、胸に突き刺さりドキリと痛くなって幼馴染みの顔が見れなくて俯いたけれど……。
幼馴染みは俺の肩を掴んでじっと見る。やっぱり変だと感じたのだろう。これが、分岐点だった。元の生活に戻るか今から辿る道へ行くか。きっと俺は間違えたのだ。だから………………。
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あいつが消えた。
幼馴染みのあいつは、何もできなくて転んだだけでも泣く弱虫だったあいつは………本物の悪魔になって消えてしまった。
俺が変に思って、聞いたときがある。
「なぁ、お前最近おかしくないか?」
あいつは少しだけ、我慢するような目をしたが俯いて顔を隠したのだ。おかしい…でも、それ以上はなぜか聞けずそのまま時が過ぎてしまった。ある日、マシューが大ケガをして病院に運ばれたという噂がギルド内に流れてしまった。その時は、魔族だからと最初は嫌がられていた二人もギルドに馴染み皆とは大体顔見知りで周りからは思っていた魔族とは違うと誰もが口にしていたもんだ。だから、その時気づきたくなかったんだと思う。どんな胸騒ぎをしようが……。
「ここか………」
最近できた月の宴っていうギルド。
噂によると様々な種族たちが一緒に暮らしているのだそうだ。ルールさえ守れば誰でも受け入れてるのだろう。ギルドの入り口に立てばすぐに知り合いの姿があった。その知り合いもこちらに気づいてすぐては「あ………」と言葉が漏れていた。
「今は皆出ているが………なんだ?クエスト依頼か?それとも……」
「いや、ただちょっと見に来たんだ。」
「………サディもいるが呼ぶか?」
「是非、会いたいな………元気にしてた?」
「まぁな………足は動かないが元気だ」
すぐに知り合いの側に行くと知り合いはコーヒーを入れてくれながらも食堂のまで案内しては座るようにたくしてくれた。気まずくもあるが、話だってする事ができて少しホッとしてしまう。この様子だときっと知らないのだろう。彼の足を奪ったのがギルド仲間であったことを。話しているとドタバタと物音を立てながらも階段から降りてきたもう一人の知り合い。こちらを見ては、ニコッと笑って「久しぶりぃ…」なんて言ってくれた。あぁ、なんて優しい彼らなのだろう。そう思っては、羨ましさと同時に憎くさが出てくる。二人の関係と俺とあいつの関係は似ていた。けれど、二人のように自分たちはなれず離ればなれになってしまった。何がいけなかったのだろう…何が………。
「ねぇ、ロダン………僕をいつか迎えに来てね。」
ふと、幼馴染みが言った言葉が頭をよぎる。
その言葉は、幼馴染みが消える前に笑いながら言った言葉だ。あぁ、全く自分もひどいやつだなぁ………なんて苦笑いをしながらも二人に向かい合う。
どうか、どうかどうか!!幼馴染みが悪魔になっていませんように悪魔に囚われた泣き虫の妖精でありますように……。そう思っては、自分も彼らには何も言わずに同じように罪を負いながらも伝えるだろう。
「やっぱり依頼を頼む。
トライシオン………トライを見つけて欲しい………」
彼らはまだ知らない。きっとまだ……。
きっと未来彼らと戦う羽目になるのだろう。
けれど、それは近くて遠い未来の話。
トライシオン………スペイン語で裏切り。