ルスツの魔王になることを決意した時の話
(あまり上手じゃない文章ですが、温かい目で見てくれたらうれしいです!誤字があったらすみません!)
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おやおや、旅人さんかな?
あぁ、わしはちょっとした老いぼれのじじぃじゃよ……って、まてまて行くでない。
暇なんじゃろ?
ちょっとは、付き合ってくれたっていいじゃろ?それに興味ないのか?………龍魔と悪魔の国の話を……。
お?のったな?
全く………これだから……じゃあ、始めようかの。
『とある悪魔と龍魔の話』
龍魔と悪魔の国は海でもなく地底の中でもなく様々な表情を持つ広大な空の上にあった。
なぜかって?理由は簡単である。大古の時代に悪魔と龍魔は惹かれ合ってそれからずっと一緒にいるのである。また、龍魔は珍しい種族故にどの種族からも喉から手が出る程に求められ捕まった龍魔族は高く買値がつくほどだった。少人数の龍魔族は自分達を守るために悪魔と契約をし、能力を少し渡すことで安全な棲みかを得たのだ。それが始まりで彼らは今の今までずっと一緒に住み続けてきた。
「ルスツ様ー!起きてくださいませー!」
そう、今王城の一室で眠る彼だってそうだ。
「早く起きてください!今日は大事な日なのでしょう?」
「そんなに揺らさなくても起きてるよ…うぅ、眠たい……」
ベッドで欠伸をしながら起き上がる彼は、この国の王であり、支配者。そんな彼はまだまだ若く、まだまだ王としての勉強が必要な年頃なのである。そして、そんな彼を支えるのは隣にいるルーチェという龍魔である。二人は幼い頃から一緒におり、辛いときも楽しいときも側で支え合って生きてきた。だからだろうか、二人は主従関係となりいつも一緒にいれることを望んだのだ。
「今日は客人が来る日でしょう?確か………人族の」
「シュバイッツ王国のリードナルド国王だっけ?あんまり気がのらないよ………だって、人は欲深い生き物でしょ?君たちが心配だよ………ちゃんと警戒しないと」
「そこまでしなくても………でも、警戒は必要でしょうね。」
怠そうにしながらも着替えさせられるルスツにルーチェはクスクス笑いながらも一つ一つ丁寧に着替えさせていく。そんな日常、いつもの日常が壊れるだなんて誰が思っただろう?きっと、誰も気づいてなかった。
異常に気づいたのは、国王との会議中であった。
「それで?こっちが君の国を守ってあげる変わりに何をくれるの?平和条約を結ぶとしても曖昧な…ルーチェ、これを………ルーチェ?」
用意された白を基調にした椅子にドカッと腰を下ろし、ニタニタと笑う国王を横目に見ながら平和条約について話をしていた時であった。
ふと、名前を呼ぶ返事が来ず振り返れば彼はどこにもいない。ふいに、クスクスと笑い声がしそちらを向くとリードナルド国王が可笑しそうに笑っていた。その笑い方はどこかこちらを馬鹿にしたような笑い方で思わずカッと頭に血が上ってしまう。けれど、こんなところで相手を手にかけるわけにはいかない。ふぅ………と深呼吸をすると、少し冷静になりながらも国王を見て笑う。
「失礼、従者がいないので探しに行ってもいいかな?大事な従者なんだ。」
「それはそれは、困りますなぁ……今日決めてもらおうと『わざわざ』来ているのに……」
「………わざわざ?こちらは来てだなんて頼んだ覚えはないね。来たくないのなら今すぐ国の外にだしてあげる。それと、自分の立場を考えろ」
あまりにもニタニタと笑いながらこちらを見下してくる国王に頭がきてしまい、少し殺気を出しながら伝えるとすぐに怯えた顔でへたりと座りこんだ。あぁ、人はそうだ。欲深い。欲深いが一人では何もできないのだ。がくがく震える国王を見れば、こんな自分でも少しばかりの優しさは持っている。
「大丈夫、なにも怖くないよ。
君は過ちを犯した。けれど、僕は優しいから君のその過ちも恐怖も食べてあげる」
それから何が起きたかって?まぁ、それはいいじゃない。ただ、欲を無くしてあげただけだよ。ここにあるものは全て僕のモノだ。それを誰かに盗られるだなんて……あぁ、でもその欲望も美しい。この胸の高鳴りは、きっと誰も理解できないだろう。
そうしているうちに、ドタバタと廊下から足音が聞こえ、バンッと音をならしながらも入ってきたのは返り血を浴びたルーチェだった。
「あぁ、止めれなかった………これだと、また戦争が起きますよ?まぁ、皆は喜びそうですが………めんどくさい」
「まぁまぁ、いいじゃん♪仕掛けたのは人側だよ………それじゃあ、こっちも手を出していいじゃない」
「はぁ………」
やれやれと呆れてるルーチェを見てはますますニヤリと笑ってしまう。
それからは、あっという間に人族との争いは始まり制圧をしてしまった。人よりも遥かに能力を持つ自分達とでは、力の差が激しく違ったのだ。瓦礫になった城を眺めながらも「あっさりだったね」とルーチェと笑いあってはツンツンと瓦礫をつついていた。以前まで立派な街だった城下町も今では更地のようになにもなく、賑わいがあっただろうが静かになっている。きっとたくさんの人が苦しんだのだろうな………と思うが、なにも感情は出てこなかった。もう、ここにいる必要はないと思えば、城に背を向けルーチェに笑いかけた。
「さぁ、帰ろうか!」
と、ルーチェの手を引いて立ち去ろうとした時だった。危ない!!と彼が自分の目の前に出たと同時にグサッと嫌な音がした。あまりにも突然な出来事で呆然としてしまう。自分に凭れかかる彼を慌てて抱き止めて一緒に座り込んでしまった。すぐにハッ!と気づいて回復魔法をかけるが、治るどころか傷がひどくなるばかりだ。なんでなんでなんで!!なんて思っていると目の前で笑い声がした。
「あっはっはっは!!!!やっぱり魔物達には勇者の剣だよなぁ!!こんなに致命傷を与えることが出きるのなら早くに持っておけばよかっ……!!!」
きっと彼が刺したのだろう。手に持っている剣には、赤い血がベッタリとつき地面にへと滴り落ちて赤い水溜まりができていた。彼がやったのだと思えば、いつの間にか水でできた弓矢で彼の胸を貫かせていた。すれば、静かに倒れる彼にまた追い討ちをかけるように何度も弓矢を刺していった。けれど、自分を抱き締める温かさに我に返りすぐにそっと抱き締め返す。
「傷口治さないと………まだ助かる道があるはず……」
「ルスツ様………お願いがあります」
「やだ、聞きたくない」
「時間がありません、聞いて」
「聞きたくない!!まだ、生きてる!!遺言みたいなこと言わないで……」
分かりたくない、分かりたくないがきっと彼は……。違う自分の心が叫んでいた。でも、流れ出す赤い血と顔色がなくなっていく彼を見てはもう結果が見えてしまって大きな涙が溢れてしまって止まらない。こんな形でのお別れだなんて……。そんな僕を彼は、優しく笑いながらも頭を撫でた。
「………お願いがあります。僕を食べてくれませんか?あなたに僕の力を渡したいのです。」
パッと彼を見ると、「それなら自分たちはいつまでも一緒だ」と言って微笑んでいた。あり得ない!そんなことを頼むだなんてひどい……けど彼がまるで子を見る母のように優しく笑いかけるのは初めてだった。僕は、「本当にいいの?」と確かめれば彼は大きく頷いた。したくない気持ちの方が大きいが、彼の望みであればとたくさんの涙をこぼしながら食べていく。彼は安らかな顔で嬉しそうに食べられながらも言った。
「我が王よ、私はいつも貴方と共に……。ルスツ、ありがとう」
自分の中に取り込まれた彼は温かくいつまでも自分と共に生きていく。
「もう、誰も俺のものは奪わせない」
小さく背中を丸める王は胸に手をあて確かな温かさを感じながら一人で決意したのだ。
ここまでが今の王と従者だった龍魔の話さ。
この事がきっかけで人族の事はあまり好きじゃないみたいだけどなぁ……。まぁ、でも欲深いのは人が多いからな。恐怖を与えながら食べるのは至高な事だよ。それからすぐに彼は魔王って呼ばれるようになるんじゃが………知ってるかい?彼は唯一、風魔法が苦手なことになっているが………実際は使わないようにしているだけで風魔法も誰にも負けないぐらいだとか……。
彼程、魔素に愛された悪役はいないよ。
おや、行くのかい?
気をつけて、行くんじゃよ………
「行ってらっしゃい、我が王」
「行ってきます」